世界を席巻するジャパニーズウイスキーの光と影

 今や世界中でウイスキーが生産されています。その中でも、近年ジャパニーズウイスキーの評価が高まっています。ではなぜ世界の人々は、それほどまでに日本のウイスキーに惹かれるのでしょうか?それは多くの場合、脳を覚醒させる刺激的な香りや口に広がるまろやかな味わい、さらに長く喉を彷徨う余韻を飲み手がより強く感じているからではないでしょうか。また、我々日本人には計り知れないエキゾチック感にもワクワクされているようです。欧米では、ジャパニーズウイスキーに関する分厚い書籍が続々と出版されています。COOL JAPANを牽引する重要なカテゴリーにもなりつつあります。

 

 各蒸留所にはその風土(テロワール)から授かったエッセンスが凝縮されています。四季豊かな日本の気候は、ウイスキー作りに大きな影響を与えます。特徴的なのは、他国よりも際立った寒暖差による劇的な熟成感です。狭い国土にもかかわらず、九州、関東、北海道などで顕著な気候の違いがあります。同時にそれぞれの地域でジェットコースターさながらの寒暖差があるのです。それがウイスキーの熟成に多大なる影響を与えてくれるのです。一時期はNAS(熟成年数非表示)ウイスキーに対する落胆が広がりましたが、ジャパニーズウイスキーは若くてもなめらかで、かつ非常に複雑な風味を感じ取ることができます。それが世界中の愛好家達に大きな満足を与えています。

 

 また、徹底的な品質管理や、伝統を踏襲しつつも、常に試行錯誤を重ねていく不易流行の精神が我が国には息づいています。まさにジャパニーズウイスキーは日本の職人が表現するウイスキーアートの進化系であると言えそうです。そんな至極の飲み物を一人でも多くの方々に伝えていきたいと考えています。

 

 一方で、ジャパニーズウイスキーの爆発的な人気にタダ乗りするメーカーや流通業者、(無免許の)転売(ネットオークション)、お酒買取業者への持ち込み等、ブームの裏側には多層化した危機的な状況が蔓延しています。世界中でジャパニーズウイスキーとして売られているボトルの多くは、中味が日本で蒸溜したものでない原酒が入っていたり、原酒混和率が10%程度のウイスキー風スピリッツであったりします。日本国内のスーパー、酒専門店、百貨店にもなんちゃってジャパニーズ(フェイクジャパニーズウイスキー)で溢れかえっています。情報が錯綜し、本物も偽物も十把一絡げで扱われているのです。

 

 本物を作ってきた大手メーカーは品薄状況に尻込みし、極端な出荷規制を強いるため、市場では定価の2~4倍ほどの価格で流通しています。そのような「ぼったくり」販売は、「プレミアム価格」と言葉を変えて罪悪感を押しのけ、自由な値付けが行われるようになりました。中国人観光客らの爆買いも価格高騰の要因となっております。今や世界の憧れの国となった日本において、「ウイスキー」の流通は最も恥ずべき分野にもなりつつあります。世界から尊敬を集める“日本人”としての矜持などありません。このまま行けば、数年後にはジャパニーズウイスキーは世界中の愛好家からそっぽを向かれ、台湾やインドのウイスキーにその座を奪われることでしょう。かつて同じような社会現象(キャンベルタウンウイスキーの没落、禁酒法時代のフェイクアイリッシュによる信頼失墜など)が何度かあったことは歴史が証明しています。


 私は、自らの人生を懸けて本物のジャパニーズウイスキーを作っている人たちを知っています。50年後、100年後を見据え、竹鶴政孝氏が伝えた伝統的技術を、正しく継承し、深化(進化)させていくためには、愛好家の皆様の声が必要です。本物のみが生き残る世界を目指して、、、。

 

2017年10月投稿

ウイスキーブティック クロード オーナー店主 

CLAUDE WHISKY 代表 井上祐伺(いのうえゆうじ)

オーナー店主 井上祐伺(いのうえゆうじ)


ジャパニーズウィスキーの定義

ジャパニーズウィスキーの定義・取り扱い基準

現在わが国において、法律上(酒税法上)のジャパニーズウイスキーの定義は存在しません。また、酒税法上のウイスキーの定義もたいへん大雑把で、欧米に見られるような原料、製造方法等による細かな規定(レギュレーション)も存在しません。

 

当店では、『ジャパニーズクラフトウイスキー』というジャンル名を店名に付記しておりますので、下記の通り「ポリシーとしての取扱い商品基準」を設けさせていただきました。


当店での取り扱い基準(2019年8月時点での考え)

  • 「酒税法上のウイスキーの定義(発芽させた穀類、水を原料として糖化させて発酵させたアルコール含有物を蒸留したもの)を満たし、国内自家蒸溜100%の原酒を、国内貯蔵庫にて3年以上オーク樽で熟成させたもの」をジャパニーズウイスキーと呼ぶことにする。
  • 輸入ウイスキー原酒(バルクウイスキー)を国内で瓶詰めしたものは、ジャパニーズウイスキーとはみなさない。
  • 中味の出自を敢えて明らかにせず、ジャパニーズウイスキーの如く装い、あるいはジャパニーズウイスキーと表記し、消費者の誤認を誘うメーカーの製品は扱わない。
  • 日本の酒税法には抵触しないが、原酒混和率10%等のいわゆる「地ウイスキー」は取り扱わない。「ウイスキー風スピリッツ」と呼ぶことにする。
  • 大手メーカーが所有する大規模蒸溜所ではなく、小規模(特に基準は無し)の蒸溜所を便宜上クラフトディスティラリーと呼ぶこととする。
  • 2020年頃までには日本洋酒酒造組合にてジャパニーズウイスキーの業界内基準が策定される見込みです。それ以降は、新基準に照らし合わせ上記の基準を見直します。

 

豊かな人生の伴侶として 極上のウイスキーを傍らに

2001年、私が初めてスペイサイドを訪れた際、蒸溜所を廻ってはスチルマンに訊ねました。「どうしてここのポットスチルはこのシェイプにしたのですか?」するとある蒸溜所の男性はこう言いました。「そんなこと知らないさ。私が生まれるずうっと昔っからこうなんだから。日本人はいつもそういう質問をしてくるけどさ(笑)。」

ジャパニーズウイスキーの品質や多様性が短期間で著しく向上したのは、好奇心旺盛な国内外の愛好家がいたからこそです。しかし、ともすると車のメカニックにこだわるように、ウイスキーに関してもテクニカルな事柄を追い求めたり、知識量を競う事が目的化し、本来のウイスキーの嗜みを見失ってしまうことがあります。極上のウイスキーは、一日の疲れを癒やし、明日への活力を養う薬にもなります。また、ハレの日を記憶に刻む儀式の酒ともなります。さらに、大切な友人との時間やビジネスの円滑化にも大きな力を発揮する事があります。それほどまでに人の脳を覚醒させ、心を潤すものだと信じております。

当店では、出来る限り新着情報や蒸溜所のバックグラウンドをお伝えして参ります。そして数量限定品を基本的にメーカー希望小売価格で販売致します。それはただ稀少性が高いから良いというものではなく、本当にクオリティの高いものを、メーカーさんに成り代わって、1本ずつ手渡す責任があるからです。人生がより豊かなものになる伴侶として、皆様のお側に、お気に入りのウイスキーを携えてみてはいかがでしょうか。

 

また、ウイスキーのことはよく知らないけど飲んでみたい、だけどなんかすごく難しそうというビギナーの方も、とりあえず何の先入観も持たず、自分が美味しいと感じるボトルを選び、風味をじっくりと楽しんで頂けたらと願っております。その後、知識や経験を積み重ねることで、より深くウイスキーを味わえるようになると想うのです。ウイスキー検定と言った体系的に情報を得られる教育機関を利用するのも良いでしょう。ジャパニースウイスキー級なる資格試験もあります。知識習得を楽しみながら、ウイスキーライフを満喫して下さい。ようこそ、ジャパニーズウイスキーの世界へ。


ジャパニーズウイスキー取り扱いアイテム


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